公園であいましょう

 力なく、うなだれて化粧室のドアをあけたら
 村瀬館長が立っていて、ジロリとこちらを見た。


   
   「桂木くん、腹でもこわしとるのかね?」

   「いいえ、だいじょうぶです!」


 
 丸まっていた背中をのばし、笑みをうかべる。引きつってるだろうけど。

 
 今は仕事中。しっかりせねば。

 
 世の多くの女性達は恋もしながら、仕事も恋もこなしている。
 
 私だって、それくらいできるはず。
 確かに、ハードルは高いけど、、、、。




 その日の帰り、私はめずらしく寄り道をして
 ストアーの化粧品コーナーに立ち寄った。
 
 今までお化粧をしてないわけじゃないけれど
 適当に、近くのスーパーで食料品を買うついでに化粧品も買っていた。

  
  (こんな私でも変われるかも、、)
 
 
 そう思って、来てみたのだけど。
 棚の端から、端まで、ずらりと化粧品が並んでいる。
 いったい、どの化粧品がいいのだろう。
 私は、途方にくれた。

 結局、いつものよりは、ランクが上の化粧水と乳液を買って、店から出ようとすると、


  「桂木さんじゃない?」


 と声をかけられた。
< 33 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop