公園であいましょう

 差し出された本の表紙には、しっかりとしたゴシック体の英語で
 ”GREAT BLUE" と書かれている。

 その本と、その本を差し出している骨張った大きな手を見て
 私は、はっと顔をあげた。


    「久しぶり、委員長。」
 


 目の前に佐倉くんがいて、私をみて微笑んでいる。


   
    「さ、さ、さく、、、。」
 

 佐倉、、と言いかけて、私は戸惑った。
 ”佐倉くん”じゃなく、”井倉翔太さん” と言うべきだろうか。



   「逢えなくなったから、逢いにきた。」

   「....................。」

   「もっと、早く来るつもりだったけど、仕事が忙しくて。
    でも、やっと来れたよ。」


 ああ、佐倉くんは変わってない。

 でも、変わってしまったものもある。

 私は知ってしまったから、今のあなたが、佐倉くんじゃないってこと。



   「あ、あの、こんなところに来たら
     まずいんじゃないでしょうか?」

   「なぜ? 俺、この地区に住んでるし、問題ないでしょ。」

   「い、いや、そういう問題ではなく、、、。」

   「ずいぶん逢わなかった気がする。元気だった?」

   「はい、おかげさまで。」

   「俺は、北海道に行ってた。
    もう、うっすら山に色が着きはじめていてさ
    あれが全部紅葉したらきれいだろうなって思って。
    広々とした景色みてたら、
    委員長にも見せてやりたいなぁ、、って、、。」

   「あ、あの、本の貸し出しには、登録が必要で、、。」
 
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