月だけが見ていた
閉じた瞼の奥で
歩道橋の階段から落ちていく彼女の映像が
何度も何度も、甦る。


『葉子!!』


慌てて伸ばした手は、葉子には届かず
虚しく空を切った。




ーーー 今日だけじゃない


俺の手は、いつだって
葉子を救う事が出来ない。


その瞳の中に潜む、深い孤独を
どうしても消し去ってやる事が出来ないんだ。
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