泣き虫イミテーション
偽物の水源
「さあミツ答えて。何があったの」

「んー、内緒ー。久しぶりの二衣ちゃんだ」

ぎゅーっとその細身の体を抱き締めながら光成はソファーに沈み込む。その慣性に従って二衣もソファーに膝をついた。

「寂しかった?」

「おかげさまでね」

「俺も寂しかったよ。おもわずスマホ二台持ちになるところだった」

「謎すぎる」

「二衣ちゃんが浮気がちなせいだよ」

「…?」

「あと俺の女ぐせの悪さかな。あ、ほら始まるよ、テレビ見ててね」

そういって光成はついていた音楽番組のボリュームを上げた。画面には今をときめく大人数アイドルグループが映し出されている。カメラが全体を捉え、そして個々をめぐる。

「え?樋之上さん…?」

最奥に一人、笑顔の微妙な見知った顔がいた。緊張した顔で少しだけもじもじと体を揺する。

「ミツ、何したの?」

「可愛いって認められたがってたからね。舞台を用意してあげたの。これで忙しくなっちゃえば俺達には手出しできないし、取り引きしたから一石二鳥で安心だよ☆」

「意味不明すぎる」

「二衣ちゃんは何も気にしなくていいよー。全部俺が君を守るためにやったことだから」
気にしなくていいからと言う割には、恩を着せた言葉で締め括る。二衣はそんな光成にキスをした。

「私のためになんだね」

「んー?そうだねー」

「ミツ、好きよ。私を大好きで、私だけを特別にしてくれる君が好き。君がいるから私は特別な人間なんだよ」

「うん、そうだね」

日常がぬるま湯が戻ってくる。
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