泣き虫イミテーション

偽物の協力

ひどく静かだ。教室内は祭りの喧騒と切り離された。始まってすぐなせいで、一般客より生徒の方が多かったせいだ。
ガダンッと椅子をひく音がした。

｢一衣さん、本当に来てくれたんですね!ありがとう!!｣

静寂を破ったのは、魔女。若松楓が一衣に腕を絡めてパーテーションの奥へ連れ込む。手を掴まれている二衣も一緒にだ。光成もそれにつづいた。

占いコーナーとして使われているパーテーションの中に四人が手狭ながら入ると教室はざわめきを取り戻した。しかしそれは全て二衣と光成のことを噂するものである。

｢たち、二衣さん平気？｣

若松が二衣に問いかける。二衣は頬を伝う嫌な汗をぬぐった。

｢平気、だよ｣

｢えっとー、私と貴方初対面だよね？｣

一衣が若松に話しかける。若松はほとんど目も向けないでそれに応えた。

｢はい。そうですけど。名前は朱本が言ってたので、橘一衣さんでよろしいですか？｣

｢うん、そう。はじめまして、よろしくね｣

｢はじめまして。若松楓。覚えなくても一衣さんの人生に支障はないよ｣

｢若松、悪い。｣

｢これくらい構わないよ。人生は恋とハプニングだ。例え5分占いが止まっても、行列が人を呼ぶだけだと期待しよう。確認しておきたいことがあるならいまここでした方がいい。外では視線の的だよ｣

｢ありがとう｣