泣き虫イミテーション
偽物の本当
「若松さんならどういう演出にするかな。」

「とりあえず王子様が登場しやすいように、お会計しちゃおうかねー。それで移動しよう。お迎えが大変になるように。葉月に連絡してみようかな」

一つさきの駅の繁華街の方に当たりをつけて歩き出す。その間に若松は西野に電話をした。

「もう、ばらしていいんでしょう?」

「うん。隠さなくていいの。」

「だってさ。ん、どこの店かな?あぁわかった。何人くらいいるの?そう。二衣さん17人くらいいるよ。」

「平気。ミツの彼女はいるの?」

「うん、」

若松はスマホを持ってない方の手で二人と教えた。二衣もそれにうなずく。西野たちが仲間内だけでやっている打ち上げに参加するのだ。
光成が迎えに入りにくいように。でも入るしかなくなるように。
西野からきいたカラオケに向かって歩き出した。
「せっかく、ごまかすためにロミジュリ改編したのにね。」

「お手数おかけしました。でもいいの。だっておかげでちゃんとわかったでしょ?」

「橘さんがモテる理由がわかるな。たしかに振り回されてみたいと思うかも。私はごめんだけど。」

二衣はスマホで光成の現在地を調べる。どうやら今学校に歩いているところみたいだ。それを若松につたえると少し急ごうかと、早歩きになった。


「どうもー!途中参加組の若松と橘さんです!盛り上がってますかー?」

パーティールームのなかに歓声のような声が溢れた。二衣は三々五々固まって座っていた人達のあいだに連れていかれる。若松は離れて西野の隣に。二衣のクラスの人と、西野と仲がいい陸上部、友達の友達の友達くらい遠い知り合い。そして朔良が近くに座った。

「朔良くんも居たんだね。」

「まあ、ね」

「ロミジュリそろったな」なんて誰かが囃し立てて、朔良を二衣の隣に座らせた。


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