はちみつレモン

「先方は気づいてるの?」


「いえ、さっき送ったばっかりなのでまだ何も」


 田中君の言葉途中で、デスクの上に広げたノートパソコンにメール受信の表示が出現した。私のパソコンにも同じ表示が見える。
クリックしてメールソフトのウインドウをアクティブにした瞬間、課長席から低く大きな怒鳴り声がした。


「田中!宮原!」


 差出人は株式会社向陽堂の担当者。
 資料が間違っている事に対する苦情のメールには、送信元である田中君に加えて前任者である私と責任者である緒方課長の名前がしっかりCCに入れられていた。


*  *  *


 課長のお説教はきつかった。
 これが初めてのミスだったり入社した当初だったりしたら課長の叱り方は違ったものになっただろう。でも生憎と田中君の失敗はこれが初めてではなかったし、この部署で仕事を始めて半年以上が経過している。

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