【好きだから別れて】

・憎しみの天罰

あたしが高校に入る寸前、父は何も言わず家族を捨てサッサと出ていった。


ダメな父にかわり母は身を粉にして働き一人二役であたしを育ててくれ、学生時代は何不自由なく生活し、散々やりたいようにやってきた。


もう「歩」は社会人。


だから母にこれ以上迷惑をかけれない。


立ち眩みも治まらないし、体はしんどいけれど金ぐらい稼がなければいけないとあたしは仕事を休まずひたすら働いた。


悠希からは飲み屋の姉ちゃんの稼ぎ方を越えていると言われ


“ガッツマン”とあだ名を付けられる始末。


それでも根性だけはあったから意地を張り、仕事に行く日々を過ごす。


――今を頑張っていけば幸せになれる。これから変わるんだ


前向きに進み、普通の生活に戻る為に気持ちを切り替えようと必死だった。


悠希にも心配させたくないと思い、小さくなった胃に少しでも食べ物を入れ元気になろうとリハビリっぽく食事の量を増やす。


ぶきっちょながら自分で料理もし始め、切り干し大根なんてお袋チックなものが得意料理にプラスされたり…


男じみた生活を女らしく改善しようと似合わない努力をちょっとずつしていく。


脱ぎっぱなしはやめて洗濯は1日1回はする。


部屋が汚れてきたら目に付く場所は片付ける。


自分の出来る範囲で悠希に少しでもふさわしくなれるよう努力した。
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