【好きだから別れて】
「んじゃまたな」


「悠希~彼女と仲良くしろよ!」


「お前も家族大事にな!」


二人は笑顔で手を振りあい、その場を離れた。


まだあたしは喧嘩を根に持ち、気まずい空気を漂わせていた。


が、悠希は友達と久々に会えて本当に嬉しかったらしい。


満たされた笑顔を浮かべ一人にやつく。


よほど嬉しかったらしく喧嘩していたのを忘れたのか、身を乗りだし話しだした。


「あいつすげえと思うよ!」


「はっ?今の友達?」


「おう。あいつの奥さん俺らのちょい上でさ、バツイチで子供連れてきたんだぜ!」


「えっ?あの人の子供じゃないの!?」


「そう。血の繋がらない親子だよ」


あたしの目にはなんの変鉄もない普通の幸せな家族に映っていた。


実態は


幸せに見えても他人にはわからない事情を抱えていた家族…


――血の繋がりのない子…でも家族…


こっちまで喧嘩していたのを忘れ、複雑な気持ちになりあたしが黙り込んでいると、悠希は手まで動かし必死に話しを続けた。


「なのにあいつ子供大好きで可愛いって。嫁さんくるめて大事で大好きで仕方ないんだとよ!男としてすげぇと思う」


――家族って何?よくわかんない。男と女が愛しあって築いていくものなんでしょ?


家族のあたたかみや家族愛がわからないあたしにはついていけない話題。


家族が本来あるべき姿。


愛してやまないのが家族なのだろうか。


「悠希は彼女が子持ちだったらどう?」


「う~ん。俺は守りきれないかも…」


「へぇ~」


一人盛り上がる悠希とは対称的に冷めた口調のあたし。


一度他の男の妻になっただけに興味本位で気持ちを確かめたら、グサッとくる一言が返ってきてダメージが大きかった。


悠希はあたしに子供がいないからつきあえている。


もし子供がいたら


二人の関係は成り立たなかったかもしれない…


考えれば考えるなり不安で、悠希の気持ちを知りたくなる。


本当に愛してるの?って。


あたしは決心を固め、歩きながらさらりと悠希に最低な言葉を言った。


「クリスマスに別れるとかどう思う?」


「お前何言ってんの!?」


さっきまで笑っていた悠希の顔は一瞬で曇り、その場に立ち止まった。
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