【好きだから別れて】
姉から電話が来た件について悠希にいつ切り出そうか悩む日は続いた。


悠希が部屋に来てもなかなか言い出せず、顔を見てはため息ばかりが出る。


あたしが思い詰めている姿を不思議そうに見つめていたが、言葉が出てこないあたしは違う明るい話題ばかりをして話をごまかしていた。


“離れたくない”という気持ちと“このままじゃダメ”という気持ちが入りまじって考えれば考えるなりため息しかでない。


一人で部屋にいれば過呼吸になりかけ、慌てて安定剤の薬を口に含む。


フィルターのかかった胸の奥には踏み込めなく、何かに怯えたあたしは突然血の気が引き手が震える。


頭ではわかっていても気持ちが追いつかない。


とにかく悠希と離れたくなかったんだ。


毎日毎日自分の心の葛藤は続き、自問自答を繰り返す。


――姉ちゃんとこ行かないでずっとこのまま悠希に迷惑かけっぱなし?悠希さすがにくたびれるよ?でも離れたくないんでしょ。どうすんの?


変わりばえしない苦痛の日々を思い返しては自分に問いかけて悩む。


しかし、もう悩んでいれないくらい極限まで悪化していたんだ。


このまま誤魔化し続けたら誰にも打ち明けず死んでしまう。


自ら命を絶ってしまう。


姉の元に行って結果が出ればあたしの為になり、悠希の為になる。


普通の生活に戻るにはどんなチャンスでも逃すわけにはいかなかった。


医者も環境が変われば変わる場合もあると言っていた。


――きっかけがあれば変わるかもしれない。二人の赤ちゃんもいつか欲しい


保証などどこにもない。


でもこのきっかけにすがるしかなかった。


地元を捨てるしかなかった。


夢を胸に抱き、自分の気持ちを奮い立たせる。


そして、あたしは悠希に話す決心を固めた…
< 174 / 355 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop