【好きだから別れて】

・眩しい夏の黒幕

父に気持ちを伝えた日からあたしの心は軽くなり、日々幸せを感じていた。


出始めた気持ちの余裕。


行けなかった場所やパニックを起こした場所に自ら足を運び、買い物に行く。


今まで見向きもしなかった草花を見て立ち止まり、花の匂いを嗅いで自然とも触れあった。


そして、春だと思っていた季節も日を追うごとに暑さを増し、長袖だった学生は半袖に身を包んでいた。


白いワイシャツの下にすらりと伸びる腕が初々しく、若さが滲み出てる。


暑い暑い夏。


ジリジリ照らされる光を車のバイザーで遮り、エアコンのきいた涼しい車内で悠希と二人でドライブを楽しんだ。


あたしの大好きな曲を聞き、歌を口ずさみつつ会話していると


「海の季節だな!歩と初めての海、行きてぇなぁ~」


悠希はあたしが暑い所が苦手なのを知ってるから様子を伺い話しかけてきた。


「海?だりぃ~日焼けしたら美白保てないもん」


“嫌です”を全面に出し露骨に嫌な顔をする。


「お前は白いじゃなく青白いの。白過ぎ」


「じゃおめぇは黒い女が好きなんだな?」


「ちげぇよ!白がいいけど海なんだよ」


「意味わかんねぇ」


「海海海海!」


「海海うっせぇな」


悠希はやたら海を連呼し車をコンビニの駐車場に止めた。
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