私の優しい人

 彼とのお付き合いは順調に進んだ。

 ホテル代も食事代も彼が払ってくれている。

 食事代はたまに払わせてくれるけれど、これまでのお付き合いで彼が使ったお金の総額を思うと、本当、申し訳ない。

 お給料どれくらいもらってるの?
 すごく気になる……

 なかなか触れるのが微妙で未だにそれは聞けてない。

 さほど無理してる様子を感じないし、私よりもかなり貰っているのは確実かもしれない。

 お金はある。多分。
 顔よし。
 性格よし。
 これ以上の人とは、私は、もう出会いえない。



 抱き合う時、背中に回された腕。その締め付けが心地いい。

 少し筋肉質な腕が好き。
 顔のパーツはそれぞれクールなのに、それが崩れた時の愛らしさが好き。

 眠った彼の顔に手をやり撫でる。

 付き合い始めて割とすぐに、彼はホテルで裸のまま眠るようになった。

 残業の多い仕事、疲れを隠さない日もある。

「忙しい時は無理して会う必要なんてないよ」

 そう言うと、彼は困ったような顔をする。

「僕が、会いたいんだ」

「このままじゃ、里菜ちゃんが足りない」

 彼は私を笑顔にするのが得意だ。


 私達が純粋に2人きりでいられる時間は限りがある。

 ホテルを出て、電車に乗って、何時になったら、彼は寮に着くだろう。

 こんなに私に会っていていいのかな。
 私に会う事が明日の仕事に響かなけらばいいけど……

 少しでも安らげますように。
 啓太さんの疲れが取れますように。

 何も出来ない私は、眠る彼をそっと見守る事しかできなかった。
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