私の優しい人
「この位なら私も作れるのに……」
 魚介のホイル焼きをつつく。

 シンプルでなかなか美味しいが、私にだって作れる。

「里奈ちゃんのお弁当は美味しかったからね。また作って」
 彼は笑顔を見せて、随分前の植物園デートで持参したお弁当の話をした。

 それは彼にお弁当を食べてもらうのが目的で、事前にメインはお弁当を外で食べる事だと予告したもの。

 気張らず用意したお弁当の中身はごく普通。

 それでも、予想通りに褒めてくれるのは彼の良い所だ。

 そうだ。
 だから、魔が差したんだ。

 彼なら何でも受け止めてくれるって。
 私は調子に乗ってしまった。

「一緒に住んだら毎日食べさせてあげるのに」
 思わず出たセリフに、啓太さんの瞳は一瞬だけ揺れた気がした。

「私達、結婚、しないの?」

「結婚は、する。ただ、それは先の話」

「先……」

「2、3年後、くらいとしか言えないけど、相手はもちろん里奈ちゃんだけだよ」
 真っ直ぐ私を見つめる瞳に嘘はない。

 ああ、一応私との結婚は考えてくれてるんだ。

 けれど、やっぱりそれは今じゃない。

 嬉しいのか悲しいのか分からない。

 結婚相手は私。うん。嬉しい。

 2、3年先。か。
 複雑だよ。

 それだけ先、私は何歳になってる?
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