私の優しい人
「アラサーとかアラフォーとか適齢期とか、女の年齢をそんな大雑把に適当に一括りにするな……」
 小声でジトッとした目で脅すと、彼は不満げそうだったけど大人しくなった。

 適齢期とは彼は発言していない。わかってます。

 ただでさえ敏感になっている時に、イケメン後輩工藤の言動は更に私の神経に刺さった。


 ああ、早く帰りたい。
 こんな後輩の隣にいたくない。

 そう思った時程、帰れないもの。

 ルーティンワークをこなす午前。
 頼まれた仕事をこなした午後。

 もうパソコンをシャットダウンさせようかと思う定時退社一分前、仕事が湧いて出た。

 ファックス送信、そして先方への受信確認。内容確認。諸々。

 他の人でも出来るよねって思ったけど、やっぱりそれは私の担当だった。

 30分の残業で終わると予想してたのに、簡単にその時間は過ぎていく。

 全然ファックス送信できなくて、機械の故障かと思っていたら、単に外線発信の『0』の押し忘れだったりして、もう凡ミス連発。
 

 一度気持ちが退社気分になって緊張が切れてしまったようだ。

 こんなんで残業代を頂いてしまっていいのだろうか。情けなくなる。

 しかも時間帯が悪すぎるのか、取引先の担当者が席におらず、確認が取れない。

 私のミスでも誰のミスでもなくて、たまたまギリギリの時間に出来てしまった仕事。

 だから、私の涙腺が緩む理由なんてどこにもない。

 なのに、瞼が熱くなった。
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