私の優しい人
 実はこのコンパには大して期待せずに参加していた。

 土曜日の夜。

 朝から大した用事もなく、暇には違いなかった。

 それでも、気の抜けた休日の夕方に、キレイ目な服を着て電車に乗るのは、週の始まりである月曜日の出勤の朝と、変わらないような億劫さがあった。

 男性陣の職業の持つ手堅いイメージは好印象だけど、実際に合コンでくっ付いたという男女を私はこれまで見たことがない。

 彼氏は欲しい。

 でも行った所で収穫なんてあるんだろか。
 そんな思いを乗せながらの飲み会参加だったのだ


 4対4の合コン。あちらも同じ会社の仲間。

 テーブル席の端と端の対角線上に座る彼は遠い。

 全然喋れないけど、時々目は合った。
 ほんの一瞬、微笑みあうほどの時間はなかった。

 そんな私の視線を、その時にどう受け止めたのかは聞いていないけど、会計を済ませ皆で店を出た所で私の横の場所を自然にとったのは、啓太さんだった。



「私も、家で待っていてくれるのは母だけなんです」

「お互い大変だよね」

 こっそりとしたそのこの取りだけで、私の心は随分と軽くなっていた。

 多くを語らなくても分かってくれている。

 これほどの安心感を他人に貰うのは初めてだ。
 今でもその記憶は強烈に残っているけれど、彼にとっては大した事じゃないのかもしれない。

「この後どうするんでしょうね?」

「今日は一次会までって決まってるらしいよ」

「じゃあ、ここで皆さんとはお別れなんですね」

「ちょっと、物足りないよね」
 その後に交わした言葉はたったの数往復で終わっていた。

 彼からの言葉で番号を交換し、私達は静かに別れた。
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