労苦
第23章
     23
 程なく新宿区に入り、その日も午後はずっと南新宿の街にいた。


 現場近辺をうろついていたのだが、新たな手がかりは得られない。


 ただ、三原伸吾は殺害され、事件に神宗会の人間たちが関与している可能性が高いということだ。


 断片的な物証と繋がらない人間関係――、正直なところ参っていた。


 南新宿署へと入っていく。


 刑事課の横にある帳場に行くと、大村がいた。


 立ち上げていたノートパソコンの画面を見ている。


「大村係長」


 背後から呼ぶと、振り返り、


「ああ、梶間警部に橋村警部補。今日も捜査ですか?」


 と言って、一瞬当惑したようだった。


「大村係長、質問いたしますが、なぜ田村刑事部長や矢野原監察官とお会いになったんで
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