労苦
第32章
     32
 その日、午後5時過ぎまで南新宿署の帳場にいて、前田や石川たちと話をした。


 だが、事件捜査のための手がかりは見つからないまま、その日も撤収する。


 心身ともに疲れたまま、帰庁した。


 一課のフロアに戻り、各々パソコンに向かって、キーを叩く。


 変わったことはなかった。


 捜査報告は付けている。


 誰が読んでいるのかは知らないのだが……。


 もちろん、俺たちが半ば抜け駆けで事件捜査をしているのは事実だ。


 刑事部長である田村は知っているのだし、吉村も薄々勘付いてるだろう。


 だが、ある意味、警視庁のデカたちも今回の一連の事件に関し、手も足も出てない。


 神宗会の構成員が事件に関わっているというだけで、震え上がっているのだ。


 暴力団の犯罪は絶えない。



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