労苦
第9章
     9
 その日、また南新宿近辺を歩いた。


 今一冴えない。


 勘が、である。


 三原伸吾殺害で、所轄に帳場が立っているのに、だ。


 きっとあの帳場も動きが鈍いのだろう。


 嘲りの感があった。


 幾分。


 どうせ所轄の刑事が束になっても、警視庁のデカには敵わない。


 第一、ろくに物証等を掴めてないからだ。


 別に所轄の捜査方針に口出しすることはない。


 だが、あの鈍さじゃおそらく捜査は難航するだろう。


 そう思い、しばらくの間、ずっと事件の背景を考え続けていた。





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