労苦
第10章
     10
 ちょうど目抜き通りで、一課の他の警官たちと出くわした。


「梶間、橋村。何でお前らが動いてるんだ?」


 一課で警部の嶺岸(みねぎし)がそう言い、訝しがる。


 嶺岸は強行犯七係の係長で、階級は同じ警部だから、対等だ。


「いや。事件があってるから、動かないとって思ってな」


「勝手な行動だろ?慎め!」


「目の前に事件があって、みすみす退くわけにはいかんだろ?」


「……」


 嶺岸は黙り込んだが、軽く息をつき、路上に唾を吐いた後、


「帰庁してから、一課長に言うからな」


 と言った。


「ああ、勝手に告げ口しろ。俺たちはヤマを追い続ける」




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