王子の結婚

「街での僕の噂と同じように、ユナの噂もよく耳に入ってきたよ
僕との婚約があったからどうしても噂は立っちゃってたんだろうけど
君は君の母上に似て、いやそれ以上に美しい娘だと
可愛いらしかった少女からどんどん美しく変貌していく様を、あたかも見ているかのように聞きつらねてきた
誰からも好かれる愛らしい性格や、下も上も関係なく、優しさを忘れない心を持っている
邪心など持ち合わせていない純粋な娘なのだと
王子という僕の存在さえなければ、求婚も限りないだろうと言われていたね
僕も君と同じように、人伝に聞く君を頭の中で作り上げていたよ」

ソウに手を握り締められながら、戸惑いを隠せない瞳を見つめられた

目を逸らせない空気が流れていた

カイとは違う黒い瞳
優しさの奥に意志の強さが感じられる

「僕には側室はいない
きっとこれからも周りからは側室を娶れと促される
そして多くの世継ぎを作れと
でも兄上たちや、弟も子に恵まれ男が何人もいる
僕たちに女の子しか出来なかったとしても、例え子に恵まれなかったとしても、僕は君だけでいい
君さえいてくれればいい」

握っていた手を強く引き、ユナを自分の胸に収めた

その言葉、その出来事にユナの胸はドキドキと早鐘をうつ

「ずっと君の事だけを考えてきた
他の娘からの求婚など、興味もなかった
僕はカイ兄上のような容姿もないし、イル兄上のような魅力もない
でも君を想っていく気持ちだけは誰にも負けないよ
他の女などいらない、君だけを想っていく
やっと言えるね…」

優しく抱き締められていた身体が放され、再び瞳を見つめられた




「僕と結婚してください」




ソウの真剣な想いが伝わってくる
胸が震えた

何も余計な事など考えなくてもいい
この人についていけば…




「はい」




自然とその言葉が出ていた






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