王子の結婚

ソウは初めて顔を合わせたあの日から、時間ができれば必ずユナの元に通ってくる
今までの時間を埋めるように、ユナとの時間を大切にしていた

そんなソウの気持ちを受け止め、ユナはすぐに心を開いていった





「こんな素敵なお庭があったんですね」

花々が咲き誇り、緑豊かな庭園に2人分の食事が用意されていた
いつもは食べ終わった頃を見計らい次が給仕されるが、今日は大きなテーブルいっぱいに料理が並べられていた

それに気付いたと同時に、ソウが『下がって』と、数人の女官に指示し、人払いをした

「2人だけの時間を誰にも邪魔されたくないんだ
何かあったら僕に言って!君の為なら何でもするよ」

そんな台詞を恥ずかしげもなく口にする
ユナは一瞬で頬に熱がまわり、真っ赤になって俯く

「……ソウ王子こそ何でも言ってくださいね、私が貴方の妃になるのですから…」

恥ずかしさが拭えず俯いたまま呟いた

「それならまずはその美しい顔を僕に見せて
君に会いたくて時間を作ったのだから、君の顔が見れないなんて耐えられない」

余計に照れてしまうような発言をサラッと言い、立ち上がった
対面で置かれていた椅子を自ら動かしユナの隣に座る

「あれじゃあ君と離れ過ぎている」

かぁ、となった顔の火照りが落ち着くところがない

ソウがユナの左手を握った
にこにこと顔を覗き込むようにして言葉を続ける

「ユナは食べていいからね
そうだ、さっきのユナの言葉に甘えるよ
僕の右手は空いてないから、ユナが僕にも食べさせて」

にこにこしているのに、どこか拒絶を受け入れないという意志が見え隠れする

(そ、そんなことできるわけないっ!絶対私の反応を楽しんでる)

「ユナは僕のお願い聞いてくれないの?」

確信犯の顔をしたソウが少し顔を近付けた
ユナはもう恥ずかしくてたまらなくて、泣き出してしまいそうな顔になる
ソウは慌てて手を離した

「ごめん!ユナ
あまりに君が可愛いから困らせたくなってしまった
もうしないからね、許して?」

申し訳なさそうな顔でユナの前で手を合わせて謝る
もちろんこれもソウにとっては確信犯な演技だったが、ユナが気付くはずもない

「大丈夫です…
男性とこんなに近くにいることも、こんな風に言っていただくのも慣れていなくて…どうしたらいいのか分からないんです
ごめんなさい、子供っぽくて…」

ソウからの甘い言葉も、近過ぎる距離も、ユナにとっては全く免疫のないこと
日に日に甘くなっていくソウの態度に胸の鼓動が抑えられず苦しくなっていくのに、どんどん気持ちは傾いていった

でも気持ちが傾けば傾くほど、ソウの事が気になるようになり余計な事を考えてしまう


彼は女性の扱いに慣れている


側室はいないと言った
でも恋人がいなかったわけではないだろう
ソウはユナよりも8つも歳上の大人の男


私は何も知らない子供だ…





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