王子の結婚


そんな時に近隣の大国から縁談の話が持ち上がった
ほぼこの国でしか産出されないという貴重な鉱物と、どこからか聞きつけた後継者の王子に目を付けて

大国は姫との婚姻を結ぶと共に同盟を結び、鉱物を大国へも流出させることで資金援助をすると申し出た

もちろん姫の相手は彼だ
大国は彼の才知が後に自国を陥れる事にならぬよう掌中に収めたかったのだろう


街では貧富の差が激しくなり、貧しい者の生活は荒んだものだった
飢えや、犯罪、また富んだ者からの蔑み、不当な処遇
行政を立て直さなければ荒む一方だ
だがそれには人を動かす財が必死となる
税の取り立てを増せば更に貧しくなるのは目に見えていた

大国からの申し出は願ってもない話だった
彼と大国の姫の婚約はすぐに決まった


街での成人は18歳からだが、王家では15歳で成人と見なされる
彼が15歳になる時を待って婚姻が結ばれることになった

だが彼はどうしても嫌だった
国のため、他国の姫との婚姻などよくあることだと分かっていたし、そうしなければならないことも

下の兄の様を見て、女にいいイメージはなかったのもあるが、何よりも会ったことも、見たこともない娘との婚姻など、考えられなかった

その姫を愛せる気などしない
そもそも政略結婚に愛など必要ない
ただ隣に捨て置かれるだけの妃

母からは常々、人の心を説かれてきた
他人を蔑ろにすれば、必ず自分に返ってくると

この結婚はそれに反するのではないか
人形のように扱われる妃は、蔑ろにされているのではないか
だが国の未来と引き換えに、自分を質に捕られたこの結婚に、この姫に愛情など持てるはずもなかった


そんな甘えたことを国王である父に言えるはずもない
母に言えば何か変わったのだろうか
でも父の決めたこと
母に請うことはできなかった

甘えられるのは上の兄だけ
結婚したくないと、どうにもならないことと分かりながら泣きついた

どんなに学を積んでもどうにもならないこともある
自分は無力で未熟だと、その時はじめて分かった






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