王子の結婚

誕生日まではあと半月足らず

準備というほどのことはなく、儀式の把握や王宮内でのしきたりやら何やらを学習する、といったところ

前もって王宮に呼ばれたのは、ソウとユナの距離を縮めるためだったのか



ソウが政務や身体の鍛錬など、公務についている間は、学習がない限り基本的には自由なのだが
特に何もすることがない

キーナやよく顔を合わせる女官と話したり、宿題のように与えられた書物を読み込むくらいしかなかった


「私も何かしたいわ
どこか掃除でもないかしら
ここは皆が綺麗にしてくれてるから」

手持ち無沙汰に耐えかね、ユナがうろうろと部屋の中を歩き回る

「何を仰るんですか!
ユナさまがそんなことをする必要はないんです」

キーナが慌てて言い含め、椅子に落ち着かせる

「そんなことをされたら私たちの職がなくなります
皆を思っていただけますなら、そのようなことは考えないでください」

暇だからという、こんなつまらないことで職を解かれては堪らない

「何か趣味はありませんか?
お花など用意しましょうか?手芸などは?」

キーナの提案にはピンと来ない
でも、時間の使い道には思い当たった

「そうね、勉強したいわ」

私はソウ王子の正妃になり、後に王妃になる
聡明な彼の隣に相応しい妃になれるよう、努力はしたい

「勉強、ですか?」

今も幾つかの書物を渡され、奥としての知識を増やしているのに?とキーナは疑問に思う

「私は子供の頃より、王の隣に仕える女性としての知識しか学んで来なかったの
所作や振る舞い、思想、何に必要なのか綺麗な文字なんかもね」

そう言ってフフと笑う
それが当然ではないかとキーナは思った

「先日、王子から少しだけ昔のことを聞いたわ
私は本当に何も知らなかったって思ったの
女が政に口出すなんて馬鹿な真似がしたいわけじゃないのよ
ただ少し、この国の歴史や他国のことを知りたいと思ったの」

幼かった彼を駆け足で大人にさせた背景
心を踏みにじって振り回した外交
それがどんなものなのか、ただ少し興味を持っただけ

「でしたら書庫に行かれたらどうですか?
あちらは女人の立ち入りも許されていますし」

キーナの助言を受け、早速足を運んだ




まだ見ぬそこは、どこへの入り口か…





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