姉弟ものがたり


「…なんの話だよ」


一瞬でも動揺したのを悟られないように、努めて冷静に声を出す。


「別に何でもないよ!あっ、今日のご飯ねカレーライスだって」

「知ってるよ、玄関開けた時から匂いしてるし」


後ろ手にドアを閉めて階段を登る。
部屋に入り、真っ先にベッドに飛び込むと枕に顔を押し付けて大きく息を吐いた。


「…ほんと、変なとこばっかり感がいいんだよな」


不思議と先輩を見ている時には似ているところがたくさん見えるのに、遥を見ていると似ていないところばかりが目に付く。
以外に感が鋭く侮れないところは、先輩にはないものだ。
それにホッとする反面、少し残念にも感じる。


「やっぱ…言わなきゃ気づいてもらえないか」


枕にグリグリと顔を押し付け、足をバタバタ動かしてしばらく身悶えると、疲れたようにパタッと動きを止める。
小さくため息をついてしばらくゴロゴロ寝返りを繰り返していると


「ゆうくーん!お父さん帰ってきたからご飯食べるよーだって」


階下から遥の呼ぶ声が聞こえた。
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