東堂くんは喋らない。





東堂一哉のせい!!




私は隣の席で涼しい顔して本を読んでいる東堂一哉を睨みつける。




「東堂くん…さっき私に言った“バカ”って、どういう意味かな?」



怒りを抑えた声で聞くと、



「………」



沈黙だけが返ってきた。



ていうか、ちょっとくらい反応してくれてもいいじゃん!

何このいないも同然の扱いは!!




「ちょっと!人の質問には答えましょうって保育園で教わんなかったわけ!?ねぇ!?無視ですか!?」



「……うざ」




うざ!?



一瞥すらされることなく、ボソッと聞こえたそんな声。



たまぁ~に喋ったと思ったら“バカ”とか“うざ”とか暴言ばっか吐きやがってー!




「うざって何!?もういっぺん言ってみろコラー!」


「………」

「また無視か!?」

「………」

「やっぱ無視か!?」




「…ちょっとー、何ひとりで怒ってんの香弥」



呆れたような視線とともに現れた柑奈が、怒る私を取り押さえる。




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