東堂くんは喋らない。



早足の東堂くんにようやく追いついたのは、一階の図書室に繋がる渡り廊下だった。



「何回も何回も呼んでるのに…無視すんなー!」




仕方なく、東堂くんの前に回り込み通せんぼする。




“なんだよ”とでも言いたげに、東堂くんが眉をひそめた。




「あのさ!東堂くんって、何で他人に対してそんなに壁作ってるの!?せっかく同じクラスになった仲間なんだし、もうちょっと仲良くしようよ!」



「……」



「せめて無視はやめてよね…けっこう傷つくんだから!」



「……」



「だから無視はやめてって!」




私の言葉をさっそく無視し、横をすり抜けていこうとした東堂くんを慌てて引き止める。




「………」




東堂くんは物凄く不機嫌そうに進路を邪魔する私を見下ろすと



「……るせーな、このブス」




視線を逸らし、ボソッとかなり小さい声でそう言った。



そう、かなり小さい声だったけど地獄耳の私にはしっかり聞こえてしまったぞ…





「…あのー、今もしかして“ブス”って言った?」



「誰もが自分と同じだと思ってんじゃねーよ。ブス」




しかも二回も!!!






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