東堂くんは喋らない。






「………意味わかんないんだけど」



「何で!ボーリングに来たらボールを投げるのが当然でしょ?
ホラ、はやくー!」



怪訝そうな東堂くんに無理やりボールを押し付けて、レーンの前まで背中を押す。




「おいっ…」



「ストライクとったらすき家奢ってあげる☆」





ピースと共にそんな言葉で送り出すと、むすっとした彼の表情が、一瞬だけ和らいだ気がした。




「…今の言葉。
忘れんなよ」




投球フォームに入った東堂くんの手から、流れるようにボールが放たれる。



それは真っ直ぐ、ぶれることなく中心を貫いて




【ストライク!おめでとう!】




次の瞬間には、そんな言葉がレーンのすぐ上にある画面を飾った。




「すっ…
すごい!東堂くんすごい!何!?実はプロボウラー!?」



「…………なわけないじゃん。アホなの?」





呆れたような顔の東堂くんが振り返る。




そしてはぁ、と一つため息をつくと





「帰る」





そう言い放って、スタスタと出口に向かって歩き出す…ってちょっとー!







< 47 / 268 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop