東堂くんは喋らない。
東堂くんが拾い上げたもの…『宇宙戦艦ヤマト』第一巻。
「そ、それね!
東堂くん宇宙好きでしょ?だから私も宇宙に詳しくなろうと思って借りてみたんだけど、どうも私の目指す方向とは違うような気がして…
だからね、今『宇宙兄弟』の方にシフトチェンジしようかなと検討中…痛っ」
トンッと突然、東堂くんが私の頭の上にそれをのせた。しかも“角”!!
「ちょ、何すんの!?」
キッと睨みあげた私と、相変わらず表情のない東堂くんの瞳がぶつかる。
透き通るような白い肌に長い睫。
や、やっぱり、目立たないし存在感ないけど、東堂くんてばすっごいイケメ「あんた」
突如鼓膜を揺らしたテノールボイスに、ビクッと肩が震えた。
え…い、今喋っ…
「バカでしょ」
「………は?」
ポカーンとする私を残し、あっさり背を向け歩き去っていく東堂くん。
…い、今喋った…よね!?
し、しかも『バカ』って…言ったよね!?
やっぱ心の中でずっとそう…思ってたんだね!?
「ちょっと待てー!!」