雨恋~雨のちキミ~

-4-

「随分急いでるな」


最後のHRが終わり、鞄に机の中のものを慌てて詰め込んでいると

上から柚羽の声が降ってきた


「うん。一緒に帰る約束してるから」


「へぇー、良かったやん。………里中くん?」


「何でやねん」


教室内にはまだたくさんのクラスメイトが居る

水月先輩の名前を出さずにいてくれた柚羽に感謝しつつ

わざとらしく里やんを持ち出す彼女にツッコミを入れ

勢いよく立ち上がろうとすると


「んふ、冗談やって」


そう言い柚羽が隣に視線を移したので、つられて横を向いた

同じように鞄に荷物を詰め込んでいた塩野くんと目が合い

思わず静止する

あれからお互いに一言も発することなく

その後、貰ったクッキーを抱え教室まで全力疾走したから

まともに顔を見るのは、掃除時間が始まってすぐ以来だ

何となく気まずくて、一応笑顔を向けるとスッと顔を逸らされた


………無視された


先ほどのこともあり、ズンと気分が落ち込む

それでも先輩を待たせるわけにはいかない


「帰るわ」


「んー、また明日ー」


「ばいばーい」


席を立ち、柚羽に手を振る

『バイバイ』と言ってくれた柚羽の声が背後から聞こえたので

少し離れたところから振り返ると、塩野くんと向き合い話をしていた


こっち向いてへんし…


心の中でツッコミを入れ、慌ててエントランスへ足を向けた
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