雨恋~雨のちキミ~
第3章

-1-

「千賀子───っ!彼氏迎えに来てるで───っ」


梅雨の中休みなのか

綿あめみたいな雲が浮かんだ真っ青な空と

夏を思わせるような日差しが眩しい早朝

のんびり準備をしていると

玄関からお兄ちゃんの声が聞こえた


───先輩が?!


靴下も履き終えていないのに

素足のまま玄関まで猛ダッシュ


朝から一緒に登校出来るなんて


逸る気持ちを抑えながら笑顔でドアを開ける


「はよー」


「……………」


一度は開けたドアを無言で閉じようとすると


「ちょっ、ちょー待ってや!何で閉めるん?!」


慌てて玄関ドアを引っ掴んでワーワー叫ぶ近所迷惑な男


「何で朝っぱらからこんなトコに居るんですか?」


「お迎え?」


首を傾け、可愛く微笑む鷹野先輩


語尾にハートマークがついてそうな気がするのは気のせいか

っていうか、何で疑問形なん?

……………


そこでハッと気付く


「あのっ!お兄ちゃんは?!」


「えー?もう行ったみたいやけど」


駅がある方向を指差す先輩


「………彼氏ちゃうし…」


ボソッと呟いたのが本人にも聞こえていたらしく


「いやー、照れるわぁー。『千賀子のこと頼むわ』やって。俺、そんなに頼りになりそう?」


ヘラヘラ笑うから


「先輩には死んでも頼りません」


ブスッと膨れたまま答えた
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