幸せそうな顔をみせて【完】
「じゃ、どうするの?さすがに家主をソファに追いやるのは申し訳ないわ」


 私がそういうと、副島新は何かを考えて一度大きく息を吐いた。そして、私を見るといつもよりも真剣な顔を見せる。そして、少しの間を持ってからボソッと言葉を零した。低く掠れた声が妙に色香を纏っていた。


「俺のこと好きか?」


「は?」


 唐突な質問に私は言葉を失った。


 今は私と副島新のどちらがベッドを使うかと話していたところなのに、今のタイミングで恋愛の意思確認をされるのだろう?ここまで来て、ずっとさっきから傍に居るのに、『なんで今更』という気持ちが私の中に過る。さっきから、好きだと思うから一緒にいるのだけど…。


 まだ私の気持ちは伝わってないのかと思ってしまった。私は本当に副島新のことが好きなんだけど。再度、確認されるもの信用されてないみたいで寂しい。だから、つい、口調が荒くなる。


「好きだけど…それが何?」


「じゃ、一緒にベッドで寝る」


 好きと言った言葉の先にそんな選択肢が用意されているとは思わなかった。まさか、一番ないと思われた選択肢が目の前に出される。


 付き合って初めての晩に一緒に寝るって…酔った時には抱かないって言わなかった?


「え??それはどういう意味?一緒に寝るって?」

「ただ、寝るのに意味はないけど。俺と添い寝するのは嫌か?」


 あ、そっちの意味。


 ちょっとだけホッとしたけど、添い寝っていうのも妙に恥ずかしい。

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