幸せそうな顔をみせて【完】
 瀬戸葵(セトアオイ)24歳。極々普通の会社員。


 そして、私の横でいきなりのプロポーズをぶちかましたのは職場の同期で、同じプロジェクトチームのリーダーを務める副島新(ソエジマアラタ)27歳。


 高校の時に一年アメリカに留学して、大学院まで出ているから、同期にはなっているけど、年齢は三歳上。私とは違ってエリートコースまっしぐらの彼は同期の中でも目立つ存在だった。


 すらっとした体躯に端正な顔。サラサラの黒髪に切れ長の瞳。それだけでも見惚れるほどなのに、そのサラサラの黒髪の下には想像を絶するようなコンピューター並みの頭脳が搭載されている。それなのに、今日はアルコールが効きすぎたのか誤作動というか迷走中。


 でも、私はそんな彼が好きだった。冷静沈着なのに、どこか優しさを持っている。


 彼の並外れた頭脳も端正な容姿も認めるけど、私はそんな非の打ちどころのないような彼が見せる隙が好きだったりする。


 一緒に仕事をしていて、上手くいかない時に急に立ち上がり、『ちょっと歩いてくる』と言って少しの時間消えたり。実は辛い物が苦手で柿の種さえも食べない。そんな可愛いところも持ち合わせていた。


 成績も容姿も同期の中でも一番と言われる彼は…私の横にいつもいた。今の日本は男も女もなくて、職種が一緒なら、社員番号も50音順。となると、私の後は彼になる。
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