幸せそうな顔をみせて【完】
 時間がないのに、つい、私はシャワーを浴びてから、シートパックを顔の上に乗せる。ひんやりとしたシートパックは少しでも肌が綺麗に見えるようにとのものだった。マッサージとかもしたかったけど、さすがにそんなことをしている時間まではないから、今の私に出来る最後の抵抗だった。


 残された時間は30分を切っている。


 バスタオルを巻いたまま、私は自分の下着の入った引き出しを開け、その中を見て唸る。もしも、今日、副島新と夜を過ごすなら、可愛くて綺麗な下着がいいけど、そうじゃなかったら、期待しているみたいで恥ずかしい。


『このまま、俺にここで抱かれるか?葵の部屋に行って俺に抱かれるか?』って言うくらいだから、何となく想像は出来るけど……。期待してましたっていう勝負下着もどうかと思う。


 でも、悩む時間が勿体なくて……結局は、新品の下着を身には着けたけど、それは勝負下着というものでもなかった。普段に私が身に付けているものの買い置きだった。



 髪を乾かし、服を着替えて、化粧を終わらせたら約束の時間の5分前になっていた。女の子の用意には時間が掛かるというのはあるけど、同期としての時間が長いからか、そんなに念入りにお洒落をすることはなかった。


 化粧も普段通りだったけど、いつもはパンツスタイルが多いのに、今日はワンピースにレギンスというのはどこかにデートという意識があったからだと思う。

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