幸せそうな顔をみせて【完】
「男の人はもっとガッツリした食事がいいのかと思ってた。もしかしたら私に合わせたの?」


「確かにガッツリしたのも好きだけど、野菜も好きだ。葵が食べたいって言っていたからここに決めたけど、俺が嫌だったら絶対に我慢してまで食べようとは思わない。俺の性格知っているだろ。だから、変な気を回す必要ない」


 私の知っている副島新は自分を殺してまで人に合わせる人ではなかった。でも、副島新が野菜が好きというのは初めて聞いた話だった。でも、私の少し上から降り注ぐ声は本当に楽しみにしているようでホッとする。一応、副島新と私は付き合うようになったけど、今までのなんでも言い合える関係を壊したくない。私のために我慢をして欲しくない。


 そんな話をしていると、エレベーターのドアがスッと開いた。エレベーターを降りるとそこには広々とした空間が広がっていた。大理石の床に壁。それを囲むのは重厚なダークブラウンの木製のゲートがあり、そこから見える店内は壁際はガラスで覆われ、開放的で明るい空間が見える。そのガラスから見えるのは透き通るような真っ青な空だった。

 
「いらっしゃいませ」


 店の外観の豪華さに圧倒されている私の前に黒のスーツを着た男に人がやってきて、恭しく頭を下げたのだった。その優雅な物腰にまた緊張が高まってくる。明らかに敷居が高い。


「予約していた副島ですが」


「お待ちしておりました。では、こちらにどうぞ」

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