印堂 丈一郎の不可解な生活
化け物は五感も人間より遥かに超越している。

この古城のある敷地の入り口。

「!」

ザン!と。

力強く足を踏み入れる音が聞こえた。

「そら、客がおいでなすったようだ」

俺の読みに外れなど有り得る筈がないと言わんばかりに。

サーはニヤリと笑い、直後。

「……」

その笑みが、スゥッと消えた。

「無粋な…邪魔立てするか」

「え…?」

独り言のように呟いたサーの言葉に、私は首を傾げる。

「感じ取れぬか。真祖とはいえまだまだ未熟だなセシル」

サーは軽く舌打ちした。

「この黒十字 邪悪の愉悦を横取りしようとするとは…生まれ変わっても邪魔者には変わりないか」

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