嘘と正義と、純愛と。
「依頼主の三木っていう男が裏で何してるか勘付いたあいつは放っておけなくなって、結果的に野原という男を救った」
やっぱり、そういうことだったんだ!
私の考えは間違ってなかった。彼は、お父さんを救ってくれたんだ。その理由がなんだったかは明白ではないけれど、それは事実だった。
「イチヤって、ああ見えてアツイやつなのよ。もともと警視庁捜査一課で活躍してたらしいからね。父親は現警視監らしいし」
「警視庁って」
あまりに想定外の単語が飛び出してきて絶句する。
「正義感強いのね。だから組織で動きづらいのがもどかしくなって、こっちの業種に流れてきたって所長から聞いたことがあるわ」
私は彼を思い返す。
みのりさんの話の通り、確かに彼は初めから正義感が溢れていたように思う。
「イチヤはキャリアよりも、市民……ううん。目の前で困っている人に手を差し伸べたい、そんな性分なのね」
私は堪らず椅子から立ち上がり、みのりさんを問い質す。
「彼っ……イチヤさんは、今、どこに?!」
「知らないわ」
タイミングなんて計らなくても、勝手に口が動く。
でも、その先の期待をバッサリと裏切るような答えが即座に返ってきて茫然とした。
「そんな……」
知らないっていうのはどういうこと? だって、同僚なんでしょう?
それも業務秘密っていうこと? だったら、仕事以外のことでもなんでもいいから……。
縋り付くような目を向けていると、さらに衝撃の言葉が私を襲う。
「辞めたわ」
「辞、め……?」
「一週間くらいになるかしらね? ああ見えて几帳面だから、ご丁寧に与えられた事務処理の山の罰を全うしてからね。あれだけ事務処理は嫌いとか言ってた奴が、笑っちゃうわ」
失笑するように説明してくれたみのりさんは、伝票を持って立ち上がる。
私はそれを目で追うことも出来ずに、そのまま硬直していた。
みのりさんの影が視界からなくなる直前、その白いブラウスがぴたりと止まる。
ゆっくりと視線を上げると、みのりさんは振り向かずに言った。
「前にあなたが事実を知ったあの駅。あそこ、もしかしたらまだアイツが使ってるかもしれないわね。……引っ越したりしてなければ」
そうして再びヒールを鳴らして、みのりさんはお店を出て行ってしまった。
夢じゃない。
目の前に置かれたみのりさんのコーヒーを見て、これは現実なのだと確認する。
ほんの少しの希望だけど、一歩、彼に近づけた。
あの、苦い思い出の残る駅へ。
そこに行けば、あの人がいるかもしれない。
そう思うだけで、私は震えが止まらなかった。
やっぱり、そういうことだったんだ!
私の考えは間違ってなかった。彼は、お父さんを救ってくれたんだ。その理由がなんだったかは明白ではないけれど、それは事実だった。
「イチヤって、ああ見えてアツイやつなのよ。もともと警視庁捜査一課で活躍してたらしいからね。父親は現警視監らしいし」
「警視庁って」
あまりに想定外の単語が飛び出してきて絶句する。
「正義感強いのね。だから組織で動きづらいのがもどかしくなって、こっちの業種に流れてきたって所長から聞いたことがあるわ」
私は彼を思い返す。
みのりさんの話の通り、確かに彼は初めから正義感が溢れていたように思う。
「イチヤはキャリアよりも、市民……ううん。目の前で困っている人に手を差し伸べたい、そんな性分なのね」
私は堪らず椅子から立ち上がり、みのりさんを問い質す。
「彼っ……イチヤさんは、今、どこに?!」
「知らないわ」
タイミングなんて計らなくても、勝手に口が動く。
でも、その先の期待をバッサリと裏切るような答えが即座に返ってきて茫然とした。
「そんな……」
知らないっていうのはどういうこと? だって、同僚なんでしょう?
それも業務秘密っていうこと? だったら、仕事以外のことでもなんでもいいから……。
縋り付くような目を向けていると、さらに衝撃の言葉が私を襲う。
「辞めたわ」
「辞、め……?」
「一週間くらいになるかしらね? ああ見えて几帳面だから、ご丁寧に与えられた事務処理の山の罰を全うしてからね。あれだけ事務処理は嫌いとか言ってた奴が、笑っちゃうわ」
失笑するように説明してくれたみのりさんは、伝票を持って立ち上がる。
私はそれを目で追うことも出来ずに、そのまま硬直していた。
みのりさんの影が視界からなくなる直前、その白いブラウスがぴたりと止まる。
ゆっくりと視線を上げると、みのりさんは振り向かずに言った。
「前にあなたが事実を知ったあの駅。あそこ、もしかしたらまだアイツが使ってるかもしれないわね。……引っ越したりしてなければ」
そうして再びヒールを鳴らして、みのりさんはお店を出て行ってしまった。
夢じゃない。
目の前に置かれたみのりさんのコーヒーを見て、これは現実なのだと確認する。
ほんの少しの希望だけど、一歩、彼に近づけた。
あの、苦い思い出の残る駅へ。
そこに行けば、あの人がいるかもしれない。
そう思うだけで、私は震えが止まらなかった。