Someday ~私がいた夏~
 しばらく歩いて大通りから離れると、静かな雰囲気の中にしっくりなじんでいるカフェを見つけた。
「ここのケーキおいしいんだよ。」
「そうなんですか。」
「こっちに住んでるときに、よく行ってたんだ。」

 シックな木目のドアを開けるとコーヒーの香りがふわっとした。
それだけで、自分がちょっとだけ大人になったような気になる…。
優しそうな店員さんに案内されて2階の窓側へ座った。

 前に会った時と同じで、すぐにオーダーを決められない。

「う~ん…」
「あはは。悩んでんの?」
「すいません…何にしたらいいか迷っちゃって。」
「そうだなぁ。ケーキはいちごのタルトがおすすめかな。飲み物は、紅茶?」
「あ、いいですね!それにします。」

康紀さんは、コーヒーとアップルパイ、そして私のオーダーをしてくれた。

「久しぶりだね。」
「そうですね…。こっちで会えるって思ってもなかったです。」
「やっと休み取れてね。友達に会いに来たんだけど、今日はそいつバイトだし、桜ちゃんこっちにいるから、久々に会えるかなぁって。寮に電話するのけっこう緊張したよ。」
「まさか電話来るって思わなかったから、びっくりしました。」
「電話のとき、驚いてるのよくわかったよ。」
「え?変でした?」
「いや、なんかこう…やっぱりリスって感じだった。あはは」
「リスって…。でもホントすごくうれしかったんですよ?」
「それなら電話した甲斐があったよ。」

 ふっと笑顔になってタバコを取り出す姿に、やっぱり胸がキュンとなる。
心の中が
(やっぱりかっこいいね! 大人っぽくて素敵だね!)
ってざわざわしてる。

 落ち着いてる康紀さんと対照的に、私は行動の1つ1つが子どもっぽい気がして
ちょっぴり悔しい気持ちになっていた。
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