陽だまりの天使
ギャラリーで会う心づもりはしていたけれど、こんな風に心の準備もないまま会ってしまうとは思わず、一気に緊張が高まる。
どんな顔をしたらいいか、相談したい直美を目で探してしまうが、もちろんそんな都合のいいタイミングで現れるわけもない。
ぐっと両手の拳に力を入れ、できるだけ平静を装って会釈する。
「こんにちは」
上ずりそうな声で平凡な挨拶しかできなかったが、身体を起こすと、坂木さんは表情を曇らせて駆け寄ってくるのがめに飛び込む。
「高野さん、一人?こんな寒いところで・・・顔色も悪いし、暖かいところに行こう」
会ってはいなかったけれど、メールの言葉が柔らかくなったのと同じように、2週間前より気さくな話し方に変わっていて、心配されていることもさることながら、いつの間にか距離感が縮まっていたを感じて嬉しい気持ちが沸きあがり、寒さで固まっていた顔も綻ぶ。
「人を待つのはそんなに苦痛じゃないから大丈夫です」
人を待たせるのは心苦しいけれど、待つのは相手を想って待っていられる。
そんな私に坂木さんは小さく首を振って両手をあげる。
きょとんとその手の行方を眺めていると、少しでも暖かさを逃さないように組んでいた私の両手の上に落ちてきた。
「やっぱり、こんなに手も冷たくなって・・・高野さん、そういうのは大丈夫って言わない」
言われたことに反論も応答もできず、思わず息を止めて目の前にある形のいい指を見つめる。
骨ばった坂木さんの手に自分の手が覆われて、最初から予定外で、十分気持ちが焦っていたのに、許容量オーバー。