黄昏と嘘

・黄昏

 
電車に揺られ車窓を眺めながら、もうここからの車窓ともさよならしないといけないのか、まるで人事のようにそんなこと思う。

そんなチサトの目に映る景色。

2つ目の駅を過ぎる頃に見える大きなブランコがある公園、そして大学が近くなると遠くに見える背の高いビル群……。

どうして?こんなのって急すぎるじゃないの。
違う、石田さんは何一つ悪くないのに。

チサトの中にいろんな思いが交錯し、モモカの気遣う表情をまた思い出してため息をつく。

気がつけば電車は「緑が丘駅」に着いたようで、この駅では新快速の通過待ちのためドアがしばらく開いたままになる。

カノコ、今日、最初の授業は一緒だったけ。

チサトはこの駅を利用する彼女を思い出し、ホームにいるたくさんの人の中に探す。


少しして向かい側のホームに新快速がそのままスピードを落とすことなく入ってくると同時にカノコが息を切らせて乗ってきた。

「あー、間に合ったー!」

「声、大きいってば。ちょっと、電車の中だよ」

安心しきったように思わず大きな声のカノコにチサトはシッと人差し指を口元に当てて小さな声で注意する。

「ああ、ごめん、ごめん。
今日はさすがに間に合わないって思ったからさあ」

カノコはカバンからハンカチを取り出して顔を押さえるようにして汗を拭く。

彼女が乗り込むと間もなくドアは閉まり電車はゆっくりとスピードをあげ、チサトは視線をカノコからまた車窓に向ける。

「あれ?なに?元気ないね?」

カノコはつり革にもたれるようにつかまりながらチサトの顔をのぞき込むようにして聞いた。

「うーん……」

カノコはチサトが出て行かなければならないことを当然、知らない。

「いつもならなんだかんだといろんな話してくるのにどうしたの?」

どうせ話したところで解決できるわけない、そう思ってチサト黙っておくことにした。
カノコはそんな態度の彼女が気になるのか、さっきよりも確かめるように顔を覗き込みチサトの表情を見ながら聞いてきた。

「……なんかあったの?」

そう言われると。

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