黄昏と嘘
彼女が言葉に迷っているとアキラが続けて自嘲気味に言った。
「それともキミは僕を慰めているとでも言うのか?
だとしたら・・・キミみたいな・・・子どもに慰められるなんておしまいだな・・・」
その言葉はチサトの心をじゅうぶんに傷つけたけれど、アキラの表情もまた、哀しそうだった。
そう言い放つ彼もまた傷ついていた。
私じゃ先生の力になれない・・・。
なんでもいいから私は先生の役に立ちたい・・・。
でも今までずっとそう思ってきたけれど私には微塵の力もない。
そしてアキラはうつむいて両手を髪にうずめ、これ以上、一緒の場にいると余計にチサトを傷つけてしまうと思ったのか、小さな声で言った。
「・・・悪かった・・・。
もうひとりにしてくれないか」
しかしチサトは今、アキラをひとりにすることはできない、と感じていた。
私が先生を傷つけてしまったから。今度はあのときのようにこの場から去っちゃいけない。
「あの・・・私・・・、先生を・・・」
「頼むから・・・!」
続きはもう聞きたくない、チサトの言葉をかき消すようにアキラは怒鳴った。
その彼の言葉に目の前にあるピアノとアキラが自分の涙でにじんできたけれど、ぐっと我慢する。
「私は・・・先生の、味方になりたい・・・」