黄昏と嘘






そして週末に実家に戻ると決めてから、チサトは毎日を忙しく過ごすように心掛けた。
できるだけアキラと一緒に同じ時間を過ごさないように家にできるだけ遅く帰り、アキラが帰る頃には自分の部屋から出ないようにした。


あのときからずっと練習していた言葉、笑顔でここを出て行くことを伝えること・・・、その言葉をアキラに伝えてそしてやっと終わるのだ。

彼への想いも終わりにさせなければならないのだ。
そう言い聞かせながら。



そこまで思い詰めているのだから当然、チサトはアキラが自分に対し、想いを抱いているなどと全く考えてもいなかった。
そしてアキラの方もまたチサトが家を出て行くなどと考えてはいなかった。
このままではいけないとはわかっていた。
わかってはいたけれど、何をどうしていいのか、全くわからなかった。


ふたりが家の中で顔を合わせることはなかったけれど、ただ、ぎこちないと感じる時間だけが流れていた。




















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