ありふれた恋でいいから
「俺、別にボロアパートでもいいかなあ。須藤とずっといたいし」

けれど、合格するどころか試験を受ける前からそんな話をする畑野くんは、いつもの落ち着いた雰囲気には少し、そぐわない感じがする。
いつもよりもテンションが高いというか。
でも、それが久しぶりに会えたせいだと気付いたのは、人気のない境内を歩いていた時だった。

「……っ」

近くに植えられていた樹齢の長そうな木の陰で少し強引にキスをされて。

「…会いたかった」

額をつけたまま紡がれる言葉に心臓は猛スピードで脈を刻む。

「すっごく、会いたかった」

「私も。寂しかったよ」

「ホントに?」

「ホントだって」
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