ありふれた恋でいいから

もう二度とこの手を離さない

「―――須藤!!」





……突然呼ばれた名前に、息が止まるかと思った。

そんなはずがない。
あるはずがないのに。

その声を聞くだけで、誰だか分かってしまう。
心の奥から愛しさが溢れ出てくる、その声の主が誰なのか。

予感に急かされ、勢い良く刻み出す鼓動を抑えるように、ゆっくりと後ろを振り向けば。



「……畑野くん…」



ただ、会いたいとひたすらに願ったその人が、視線の先にいた。



呼吸をするのも忘れて、無意識に身体が彼の元へと向かう。

引き寄せられるように、懐かしい場所へと帰るように。
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