魔法の彩 ―青―
1:蛙の道







蛙山の木々はすっかり葉を青く染め上げている。


鮮やかな色に風流を感じる人も多いそうだが、どうも理解できない。


ここまで鮮やかだと、逆に気持ちが悪いものだ。


増してやここは蛙山。木々と言っても、少々癖がある。





「わっ。……蛙山って初めて来たけど、本当に跳ねてるんだ」





となりを歩く、もう十八にもなる青年が一人言とは思えない声量で声を上げた。


返事をしようかと躊躇ったが、掛ける言葉も見つからなければ、特に求められもしないため視線だけちらとやった。





「あ、蝶々だ」





十八にもなる青年が蝶々を見つけて喜んでいることに奇妙さを覚えたが、話を戻すことにする。


この蛙山の特徴は、その名に大きく関係している。


さっき奴が驚いたように、この山の木々は蛙のごとくぴょんぴょんと音を鳴らし、大小問わず跳ねる。


夏になると不思議なほど青く染まり、跳ねが大きくなるその姿を蛙に見立て、この山は蛙山と呼ばれるようになった。


跳ねる以外には何もないが、蛙山と言う名前に女は気持ち悪がる人も多数いる。


来たこともなければ見たこともないという女が、気持ちが悪いと言うのは偏見が過ぎると思う。

猫なで声を出し男にすり寄るお前らのほうが気持ち悪い、と言ってやりたいものだ。





「蛙山って、正しい名前じゃないんだよね。確か……燈笠馬山?」




これは訊ねられているのだと思い、口を開く。





「そ。昔は一年中赤とかオレンジだったんだって」


「へぇ。なんで青くなったの?」


「昔この辺りに住んでた緑の魔法使いが、殺虫剤を作ったときに分量を間違えて、変な薬作っちゃったんだって。それを撒いたら、こうなったんだとさ」


「そんなことができるんだ!会ってみたいなぁ」





無理だ。もう死んでる。





「僕も、こういう不思議なことがしてみたいよ。プリン山脈って異名がつく山にしたり……」




その発想はどこから来るのだろう。


蛙山より不思議なのはその頭である。





「……お腹空いたなぁ。ナツミ、お弁当にしようよ」




本当にこいつは唐突で、メルヘンな奴だと思う。


眉をひそめ、反対の意を見せると、奴は手を組み合わせ“お願いだよー”と情けない声を出した。





「……はいはい。じゃあお弁当にしよう」


「やった!もうお腹ぺこぺこだよ」





蛙山第三休憩所、という屋根とベンチだけの小さな休憩所で昼食を摂ることにした。


つくづく、自分は甘いと思う。





「いい?目的地は第七休憩所の近くなんだから、食べ終わったらすぐ行くからね」


「わふぁっふぁ」





その口には既におにぎりが詰め込められている。


ずい分大荷物だと思っていたが、開いたままの肩掛け鞄から覗くのは大量のおにぎり。


依頼で、魔物の討伐に来たというのに鞄の中身がほとんどおにぎり。



こいつ――カエデの不思議な行動を理解するにはまだまだ時間がかかりそうだ。
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