“毒”から始まる恋もある


「……私」

「徳田さんとは話したんですか?」

「まだ」

「もし一人で話しづらいなら、俺付き合いますよ?」

「人がいいのね」


くすりと笑い、おしぼりをギュッと握る。


……里中くんに振られてから、ずっと恋がしたかった。
早く誰かを好きになって誰かに好かれて、見返してやりたかった。
それが、里中くんに見劣りしないくらい素敵な人であることを、心の底から願ってた。

その気持ちが、ずっと私の目を曇らせていたんだわ。


「大丈夫、一人でちゃんと話すわ。……それで、ちゃんと出来たら」


視線を少し上げると、彼の茶色の瞳とぶつかる。


一番、恋愛対象にならない人だと思っていた。

年下で、爽やかだけど変なところ聡くて。
お店のことが一番の恋愛とは次元の違うところにいる人だって。

だけど。


「そしたら、また食べに来るから……」

「じゃあその時は、とっておきのデザートをごちそうしますよ」


にっこり微笑まれて、心臓がギュッと掴まれたようになる。

沸き上がってくる気持ちに、私は心の中で納得した。


――本当の恋は、落ちるものなんだわ。

いつの間にか、自分でも気づかない内に。







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