“毒”から始まる恋もある
13.あっけない恋の終わり


「カメリアでも行こか」


いつもの気安い口調で彼は言う。

辺りはすっかり夜の空気だ。通りには一心不乱に歩くビジネスマンや、これから食事にでも行くのかはしゃいでいる女性の一団などが交差している。


「いいわよ。歩きながら話せるし」


楽しい会話になりそうもないなら、早く終わらせたほうがいいかと気を使ったつもりだったけど、サダくんは悪い方にとらえたらしい。私をチラと見てため息をついた。


「嫌われたもんやな」

「別に、そういうんじゃないわ」


嫌ってはいないわ。
ただ、熱が冷めてしまったみたいに以前のように浮かれることが出来ないだけだ。


「ならここで話す? でも人前のほうが俺的には……」


立ち止まった彼に行く手を防がれる。向けられる瞳が挑戦的で、背筋がゾクリとした。


「サダくん」

「ちょっと苛ついとるし、何するか分からんけどええ?」


なるほど。人目があったほうが落ち着けるということか。
その問いかけは一応優しさというわけだ。


「分かった。カメリアに行きましょう?」


そうして歩く数分間の気まずさと言ったらなかった。

ついこの間まで、会えば楽しく会話していたはずだったのに、私達から軽口を取ると何も残らないんじゃないかってくらい話題が出てこない。


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