“毒”から始まる恋もある


 事の発端はこのモニター試食会のお知らせだ。

店長さんも光流も、まだ私が試食モニターをしていていいと言ったけれど、店員の彼女ってもう既に身内じゃないのかなとか思ってしまう私としては気が引けているわけだ。

代わりが見つかったら直ぐ抜けるつもりではいたものの、サダくんも一緒に抜けてしまった形になるので、急に二人も人員を探すのは難しいのだと言われてしまう。

だったら、私の代わりくらいは自分で探そうと、会社の中から人材探しをした。

身近な人物で適任者を探す。

物事をはっきり言わないという点で菫は向いてない。

舞波くんはいいなと思うけど、嫁が嫉妬深い上、本人のモラルがないから出会いの機会を与えてはいけない。

って思うと、里中くんが一番適任なのよね、って思って声をかけた見たら、予想外の渋い顔。


「うーん。俺今年は忙しいしなぁ。ほら、式場見に行ったりとか色々あるしさ」


畜生、のろけられたわ。
分かっているわよ、そんな暇があるならもっと菫といたいのよね、あなたは。

呆れつつもツッコミを入れていたのは、営業部の近くの廊下だった。

私も普通の声の大きさで話していたから、行き交う人には内容が聞こえていたのだろう。

突然、肩を叩かれたと思ったら後ろに谷崎がいて言ったのだ。
「俺がやろうか?」って。


「最近、同期の付き合いが悪くなってきたしさー。皆恋人とか家族が大事だってのはわかるけどね。あーあー。独りモンは辛いなぁ。俺だって新しい出会いとか健康的な食生活とかが欲しいしなぁ」


レイバンの眼鏡を直しながら、谷崎は私をちらりと見る。


「刈谷は両方手に入れたみたいだし?」

「はは。まあね」


振った立場としてはそう言われると弱いわけで、私はスゴスゴと奴の言葉に従うことにした。


「……分かったわ、じゃあ今度の火曜、一緒に行きましょ? 連絡しておくから」


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