“毒”から始まる恋もある

「でも栄養とかはわからないわよ、私」

「俺だって闇雲にモニターを頼んでいるわけじゃないんです。栄養面は紫藤様に、金銭面は北浜様の意見が一番参考になると思っています。刈谷さんには感覚価値、つまり、このメニューを頼みたいか頼みたくないかってところの本音を聞きたかったのに」


メニュー表をいじりながら数家さんはため息をつく。

なんなのよ、その拗ね顔。

そんなこと言われてもなぁ。
本音……言ったらあなたは傷つくと思うんだけど。

まあいいか。本人が聞きたいって言ってるんだものね。


「……私なら頼まないかな」

「え?」

「確かに美味しかったけど、玉ねぎだから。敢えて店に来て玉ねぎを食べたいって思えなかった。でも例えば、そこに美容効果があるとか分かれば頼むと思う。美味しかったからリピートはあるかも知れないけど、最初に頼みたいと思わせられなかったら売れないと思う」


一気に本音を告げると、数家さんの顔がみるみるうちに笑顔になる。


「そういうの、聞きたかったんです」


貶されてるのに嬉しそうとか、この人ホントにマゾかも知れない。


「ああいうメニューって誰が考えるの? 数家さん?」

「いいえ。俺は接客担当なので料理の方はからっきしで。店内には料理担当は常時三人いますが、新メニューを考えるのは二人位ですね」

「へぇ。結構人が沢山いるのね。儲かるの?」

「ぼちぼちですかねぇ。リピーターさんに支えられているところはありますよね。だから定期的な新メニューとか限定メニューを出すことは店の継続にも重要なんですよ」

「ふうん」


そうか。作る本人じゃないから貶し言葉も気にならないのかな。
だとすると、私も話しやすい。

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