“毒”から始まる恋もある

「いらっしゃいませ、お一人ですか?」

「お、遅いでー」


カウンターから呼びかけてくれる店主に返事をする前に、奥の席にこちらを向いて座っている徳田さんが気づいて手を振ってくれた。私は店主にペコリと頭をさげ、奥のテーブルに向かう。


「すいません。手間取っちゃって」

「いい、いい。はよこっちきーや」

「はーい」


イケメンがにこやかに笑う。
ああ、いいわー。これだけで気分が上がってくる。


「おまたせしました」

「ええ、ええ。刈谷さんの歓迎会やで。さあ好きなもん飲んで。ここは俺と北浜さんのおごりやさかいに」

「え?」


一瞬驚いたように北浜さんが目を丸くした。


「え、いいんですか?」


と申し訳無さそうに北浜さんを伺うのは紫藤さんだ。


「はは。そうだな。お嬢さんたちにお支払いさせるんじゃ失礼だ」


さすがに一番の年少者に気遣われるのは気が引けたのだろう。
北浜さんは苦笑しながら応じてくれた。

でも間違いなく、最初は割り勘のつもりだったような感じだけど。

まあいいわ。私はただ酒の方が嬉しいしね?


「では遠慮無くいただきます」


荷物を避けて私の場所を作ってくれた紫藤さんの隣に座り、メニューを眺める。
結構ウィスキーの種類があるなぁ……ってことはここのウリは濃い系の酒って感じだけど。

ちなみに、現在テーブルの上には北浜さんと徳田さんのビールと紫藤さんの飲んでるオレンジジュースっぽいもの。それにポテトや刺し身などちょっとしたおつまみが載っている。

これでいきなりウィスキーは引かれるな。
男ウケのいい飲み物にしようかな。


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