学園世界のイロジカル
別段気にしてもいない様子でポイセの分を一瞥すると、ため息をふっとついた。





「…えと、聞いてもいいの?」





「なにをです?」





「…零の過去の事」





沈黙が私たちの間を埋めてしまう。



その沈黙を破ったのは、零で。





「簡単な事です。


別に、大事(おおごと)にするようなことでもありませんし、変わったことも1つしかありません」




零は目を私から背けると、小さくつぶやいた。





「その事件が起こった前と後で変化したこと。


僕は、もう…

人を信じられなくなった、それだけです」






そう言うと零はスッと立ち上がり、壁にかかっている緑の薄いマフラーを手にし首にサッと巻く。



髪の毛を無造作に手でセットすると、私のほうを向いて「ちょっと出かけませんか」と言った。






「…うん、行こ行こ!」





笑顔でそう言えば、零はいつもと変わらない様子でうなずいた。




そう、いつもと変わらない。

それが少し悲しく感じて。



せっかく距離が縮まったと思ったのに…やっぱり、一定の距離にしか零には近づけないのかな。




そんな思いを笑顔で隠し私たちは城下町のほうへと向かう。








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